さて、前回のお話は奥歯でばかり噛んでいるお子さんの顎はどうなるかと言うことをお話しました。
奥歯で噛んでいると、噛みやすいこと、そして楽に噛めてしまいます。前歯で噛むことは結構集中力 が必要で、慣れるまでには時間も掛かります。そこで毎日親御さんの食事の仕方が見本になりますし、 大きな影響力を持っているといっても良いでしょう。

上下の歯が生える時のお話

さて、今日は上下の歯が生える時のお話です。上の前歯と下の前歯の前後位置関係は上が前に2mm下の歯を上の前歯が2mm覆う形で噛んでいることが理想です。

さぁ、ここでお子様の前歯を観察してください。まだ小学校1年生くらいでは上下の前歯が生え揃って いないくらいかも知れませんね。しかし、真ん中の歯がまっすぐに降りてきたとき下の歯との位置関係 を予測することはなんとなく見られると思います。

上の歯のさきっちょと下の歯のさきっちょが当たるのは「切端咬合」(せったんごうごう)と言います。
また3歯以内で上の歯が後で下の歯が前の関係になっている場合は「交差咬合」(こうさこうごう)と言います。
3歯を超える本数で反対になっているのは「反対咬合」(はんたいこうごう)と言います。

ここで問題になるのがその時の年齢によってはその子供の将来にかなり大きな影響を及ぼすことが あります。上下の歯がひっくり返っている交差咬合、反対咬合の原因を知りましょう。

・「うちの家族の中では父親がいわゆるしゃくれ顔なのです。
  遺伝なので仕方ないと思っています。」
遺伝なら仕方ないとあきらめてしまうのならそれでもいいのですが、遺伝も多少はあるかもしれないですが 実は理由はもっと違うところにあると思います。
例えの中のお父さんの顔を毎日見て真似をしています。
これは非常に重要です。子供は実に優秀です。
見たものをすぐ真似します。それも無意識に。どうすればより上手く真似が出来るかを一生懸命 考えています。大きな原因、それはクセなのです。
ご自身のクセを意識したことがありますか?
子供はクセまでも上手く模倣します。例えば唇を噛むクセを持つ母親の前歯の叢生(乱食い歯) はやはりお子様も同じように唇を噛んでいらっしゃいますので同じような叢生(乱食い)になっています。

びっくりするくらい似た叢生になっています。遺伝と思われていますが、歯の一本一本の形、 色は遺伝が大きく左右すると考えられますが、生えてからの移動、生える場所の不足は遺伝であると 片付けるのは待って欲しい。

・「全ての歯が生え揃ったら矯正しましょう。それまで様子を見てください。」
は、よく聞く話です。

私の経験から、若原歯科クリニックではこのような説明はしません。
全ての歯が生え揃うのは 何歳かご存知でしょうか?
男女差はありますが男子14歳前後とするなら、女の子は成長が止まる時期です。
ではその時の顔がどうなっているのでしょう。
反対咬合の場合成長期を迎えた下顎(したあご)はどんどん伸びています。
なんの制限もないから伸びてしまうのです。
誰が止められるのか。毎日顎の先をお母さんが手で押さえられますか?
無理なんです。

下顎が前と下の方向に伸びてしまう理由

・上の前歯が下の前歯を押さえていない。
・口がぽかんと開いている時間が長い。
・舌先の接点はいつも先は下顎前歯の下を押している。

そうです、押しているのです。ベロの力を侮ってはいけません。なんと5キロ以上の力が軽々と発生します。
毎日毎日5キロの力が下あごに掛かっているとしたらどうなるか想像してください。
下あごが伸び始めるのは第二成長期へ差し掛かったときに一挙に伸び始めます。それまでに改善しておく、 それ以前にひっくり返っていることが解っているのなら上下の位置関係を戻しておくことが肝心なのです。

14歳超えた場合の反対咬合では歯の位置関係を戻すことは出来るとおもいます。 しかし、伸びてしまった顎の骨は戻りません。そうです、成長の第二成長期スパート が始まった時に開始しても 歯の位置は押さえられても顎の形、顔貌の改善 は非常に難しくなると言うことです。

あごが伸びてしまった場合で骨を切る治療が必要になったら外科手術しますか?

顎の骨を切る手術をさせたい親がいるでしょうか?

小学校2年生までに上下の歯が反対なら前歯の位置関係を正しい位置に矯正しましょう。

ゆっくりと噛んだ時に先と先が一瞬当たった後に下顎が前に出る程度のものなら装置をつけて数ヶ月で噛み合わせの状況は好転できます。

これは家庭でも確認出来ます。下あごを引いてゆっくりと噛ませてみてください。
注)反対咬合の特徴として唇を閉じる力が非常に弱いことが上げられます。
唇を閉じる訓練を 同時に行うことが殆どです。これによって綺麗な形の口唇が得られるだけでなく、安定した歯並びを 獲得することが容易になります。
次回は開咬・悪い癖についてです。